【福岡市南区】110年という歴史ある「高宮庭園茶寮」で開催・お茶と甘味だけ堪能するコース「甘露懐石 雨水-うすい-」の実食レポート!
「高宮庭園茶寮」で2025年2月に開催された、お茶と愉しむ甘味だけで構成された特別コースの「甘露懐石 雨水-うすい-」をいただいてきました。実食レポートです。

※画像提供:高宮庭園茶寮
お茶と甘味を愉しむ甘露懐石とは。初のこころみ

※画像提供:高宮庭園茶寮
お茶と甘味だけを楽しむ「甘露懐石 雨水-うすい-」は、「紫をん」の和菓子作家 坂本紫穗氏とコラボレーションコース。今回新たな試みということで2025年2月14~16日の3日間で行われました。
二十四節の中でも七十二候である「東風解凍・黄鶯見睆・魚氷上」で分けられる「立春」という時期と、「土脈潤起・霞始靆・草木萌動」で分けられる「雨水」をイメージした甘露懐石が楽しめます。

※画像提供:高宮庭園茶寮
甘味と共にお茶を愉しむという「ティーペアリング」では、厳選されたお茶のほかアルコールへの変更も可能ということで、お好きなドリンクと共に甘露懐石を堪能できる約2時間となっています。お茶をチョイスします。この日は佐賀「ゆず緑茶」のほか福岡「八女茶」か、京都「宇治茶」のどちらかを選べるという事でした。あまり馴染みの薄い京都という遠方の「宇治茶」をいただいてみました。
午後15時~、18時~の2部制で行われた同イベント。午後のアフタヌーンティーも良いですが夕暮れまでの情景の移ろいや、創玄な雰囲気が堪能できる夜の部も格別です。
和洋折衷な洋間は格式高く、建立110年という歴史を感じる事が出来ます。年数のある建物にも関わらず暖かかったです。一切の寒さを感じず、居心地が良い室内。
一皿目「雪解け」 春の風(東風)が氷を解かす
春の風(東風)が氷を解かすという「東風解凍(とうふうこおりをとく)」の名の通り、雪解けをイメージして作られた一皿です。四角の白いセミフレットは凍った状態で、中には日本酒でコンポートされた苺が入っています。温かい柚子の葛ソースをさらに上からかけると、ゆっくりと溶けて食べごろに。周りにかけられているのはシャンパンのジュレ。口に入れた瞬間、溶けてほどよい甘みと酸味が広がります。
温かい「ゆず緑茶」と共に。嬉野のお茶に柚子ピールを加えたお茶ということで、ほんのり柚子の香りが愉しめました。
二皿目「初音」 ウグイスが鳴き始める
ウグイスが鳴き始めるという「黄鶯見睆(こうおうけんかんす)」の名の通り、春の訪れを緑やピンクなどの温かな色合いで表した一皿。抹茶とビーツのクッキーの下には、福岡産のキウイや苺・欧州原産のベルガモットというオレンジなどの細かく刻まれたの果肉と、朱欒(ザボン)・苺・キウイや、ハーブの一種でベルベーヌのジュレが入っていて、甘酸っぱいフルーツと甘いジュレを堪能できます。
茶師の方がティーペアリングされたお茶をその都度、運んできて下さいます。
今回は冷たい宇治茶を淹れて頂きました。ジュレが甘めのデザートに宇治茶の渋みが染み渡ります。
三皿目「小躍り」 魚が割れた氷から飛び出す
魚が割れた氷から飛び出すという「魚氷上(うおこおりにのぼる)」の、氷がまだうっすらと張るような水面を、魚が割りながら飛び跳ねる様子を食感や音で表した一皿。一番上に見えるのはきな粉のかかった「揚げ湯葉」です。その下には「甘酒のパンナコッタ」や大納言小豆を使った「自家製餡子」と2種類のもち米で作る「おはぎ」。中にはなんと「苺」も入っています。
揚げ湯葉をスプーンで割ると、まるで氷が割れるようなパリパリッと音が。パンナコッタや餡子、揚げ湯葉のパリパリとした食感と共に楽しめ、たまに顔を出す苺の酸味がちょうど良い! まさに洋菓子と和菓子の融合! 思わず小躍りしたくなるくらい美味しかったです。
宇治茶に玄米を加えたお茶が用意され、そして甘いものを食べた後に一服。玄米の風味が鼻から抜け、宇治茶の渋みが最高のひとときでした。
四皿目「潤い」 土が雨で湿り気を帯びる
四皿目からは「雨水」へと展開していきます。土が雨で湿り気を帯びるという「土脈潤起(つちのしょううるおいおこる)」という、雪が雨へと変わり枯れ草残る大地へ潤いを与え、植物が芽吹いた状態をイメージして作られた一皿は「わびさび」を感じるビジュアル。雨水の時期に入った雪が雨に変わり、大地が潤いを出した情景が連想できそうな「わびさび」の庭園のような見た目ですが、実はおもてなしの気持ちを込めたお口直しの一皿。甘い物を頂いた後に「やや塩気があるものでお口をリセット」できる一品となっているのが嬉しいですね。
香りの良い「ゆり根」のすり流しスープです。青さ海苔を加えた胡麻のスティックと一緒に楽しめます。スティックが噛んだ瞬間、青さと胡麻の香ばしさが鼻に抜け、スープと共に最高の味わいが口いっぱいに広がります。
季節の野菜が使われたキッシュは黒煎りでお洒落。シャキシャキの食感は芽吹く植物が連想され、春の訪れを嬉しく感じます。
日本茶のお茶の葉を発酵させた和紅茶はアイスティーで楽しみました。花があしらわれたグラスと、紅い色味がキレイな和紅茶は、目でも楽しませてくれました。
五皿目「憧れ」 ~和菓「紫をん」コラボレーション~
5皿目は、霞がたなびき始めるという「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」の名の通り、春霞がかかって、ぼんやりと山が映るような情景を表現をしたものです。錦玉羹(きんぎょくかん)で見立てた山の中には、ミルク風味の餡が入った和菓子作家「紫をん」とのコラボレーションの一皿。春霞がかかった聡明な山のよう。食べるのが勿体ない美しさですね。
福岡あまおうで作られたいちごのソースをお好みの量をかけていただきます。
プチプチの食感が楽しめるいちごのソースと、つるんとしたなめらかな錦玉羹ののどこし。濃厚な甘みを味わう事ができます。
六皿目「芽吹き」 草木が芽を吹き始める
草木が芽を吹き始めるという「草木萌動(そうもくきざしうごく)」の、3月の初旬の木々の合間から見える春の訪れをイメージした一皿。淡いピンク色と緑色で春をイメージし、佐賀県の白いちごと抹茶とホワイトチョコで作った羊羹、煎茶の寒天がさわやかな春の訪れを表しています。
佐賀県の白いちごにはバニラのクリーム・苺のチップが乗せられたもの。チップを割りながら、サクサクとした食感も楽しめます。
スタッフの方が最後の仕上げに泡状の煎茶をかけて完成! シュワシュワと儚く消えるきめの細かい煎茶の泡には、お茶の風味もしっかりと感じられ、斬新な味わいが刺激的です。
最後まで五感で味わう贅沢な味に大満足なひとときでした。
地域の方々に楽しんで頂ける「四季折々のイベント」など
「高宮庭園茶寮」はかつては「旧高宮貝島家住宅」として「炭鉱王」と呼ばれるほど隆盛を誇った貝島太助氏の弟、貝島嘉蔵氏の邸宅として大正4年(1915年)に直方市に建設され、昭和2年(1927年)に高宮に移築されたそうですね(施設についてより)。
2017年(平成29年)5月「福岡市登録文化財」に登録された歴史的で伝統的な和風建築物ですが、現在も敷地内には趣のある庭園が広がり、豪華で厳格な佇まいが残る店内には茶室やレストランなどが営業され「人生の大切なワンシーン」にぜひ利用したいなと感じる施設でした。
結納や誕生日など「節目や記念日での会食」はもちろんですが、気軽に楽しめる「四季折々のイベント」なども定期的に企画・実施されているそうです。こちらでもまた新しい情報をお伝えしたいと思います。
●取材のご協力、ありがとうございました!
↓高宮庭園茶寮